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井泉(上野仲御徒町・湯島)
ISEN

2024.6.10

上野御徒町駅からすぐ。1930年(昭和5年)4月8日創業のとんかつ店。
コンクリートのビル群の中にポツンとある日本家屋が井泉の建物です。
現在は3代目が暖簾を守っています。

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昭和の雰囲気が残る店内

扉を開けると目の前に厨房があり、それを囲むようにカウンター席があります。
また左右にはテーブル席も1つずつ。
店舗は2Fのお座敷エリアもあり、かつては芸者衆が踊っていたそう。
1963年の東宝配給映画「喜劇とんかつ一代」では、2代目が俳優・森繁久弥に、とんかつの揚げ方を指導したそうです。

 

厨房の様子

厨房の中には、仕込んだ食材が収められたアルミの入れ物があちこちに置いてあります。
小学生時代に給食当番が運んでいたような飾り気のない入れ物。それが使い込まれて銀色の輝きがなく、マットな灰色になっているところにも歴史を感じます。

井泉の歴史(井泉公式サイト) →

 

お箸できれるやわらかいとんかつ

とんかつ

井泉のとんかつのキャッチフレーズは「お箸できれるやわらかいとんかつ」。確かに柔らかくて、さらに印象的なのはラード(もしくはバター?)の風味も豊かなところ。
写真はヒレかつ定食(2100円)。サクサクの衣と肉がしっかり密着していて分離してしまうこともありません。
この衣と肉の一体感。とても美味しい。

また、初めて訪問する際にはカウンターに座ることをオススメします。
カラッと揚げたとんかつを、適切な厚みにカットするために凹凸のあるまな板の上に置いて、素早くカットしていく様子も見応えあり。

 

海老フライもオススメ

海老フライ

盛り合わせ定食(2400円)では一口かつ、海老フライ、海老コロッケ、ほたてを楽しめます。
どれも美味しいのですが、海老フライが出色。衣を付けて揚げているのに海老の身の瑞々しさを感じる絶妙な仕上がり。

 

カツサンドのエピソード

井泉メニューに記載のカツサンドのエピソード

メニューには井泉がカツサンドを作り出した時のエピソードが記載されています。
下記は全文引用したもの。芸者の口紅が取れないように、小さなパンで食べやすく作ったそうです。

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昭和5年、「お箸できれるやわらかいとんかつ」を謳い文句にしたとんかつ店が開業した。
明治時代に西洋料理を日本人向けに改良して誕生した「ポークカツレツ」が、厚い揚げ肉を調理場であらかじめ切ったうえで供する「とんかつ」に進化。さらに人気を高めていった頃のことである。

初代店主・石坂一雄氏の孫で、3代目の石坂桃子さんが説明する。

「もともと祖父は洋食の勉強をしていたので、メニューにはハンバーグ、海老コロッケ、さらにタンシチューもあったくらいです。でも日本人がより食べやすいとんかつをという思いが、丁寧に叩くことで肉を柔らかくすることに繋がったんだと思います」

一雄さんは絵を嗜み、その画号から店名を「井泉(せいせん)」としたほど(人々が「いせん」と読んだために、やがてそれが屋号となった)。一雄さんを支える妻の登喜子さんもまた、粋な趣味の持ち主だった。

「祖母の父は日本橋で16代続く刀問屋の出なんですが、新しいもの好きで新聞記者になったという人。明治の時代に、麹町の自宅でパン食をしていたといいます。そういうところで育ったものですから、祖母は2歳の時から長唄をやるなど古典芸能や着物が好きだったんですけど、同時にハイカラも大好き。若い時から資生堂パーラーに行って、ハムサンドを食べ、ソーダを飲んでいたそうです」

その経験が、夫婦で始めたとんかつ屋で新メニューを生んだ。

「ある日、かつを見た時に、パッと思いついたと言ってましたね。常に身近にあるパンで、挟んでみたら面白いんじゃないかと」

当時の「井泉」は、下谷花柳界の芸者によく利用されていた。そのためかつサンドには、彼女達のための配慮がなされた。

「口紅が取れないで食べられるようにと、小さなパンを特注して作ったんです」

お座敷でおちょぼ口の芸者が、かつサンドをつまむーー。昭和初期の粋な女性の姿が目に浮かぶ。
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ざっくばらんな感想・クチコミ

訪問日:2024/6/1

kjの顔写真

kj
・料理/盛り付け/器 ★★★★★
いろんなとんかつを食べてきたけど、トップレベルの美味しさ。
既述してますが海老フライも本当に美味しい。
また豚汁に入っているネギが2cmくらいの分厚い輪切りで、こちらも珍しくて驚きました。

・接客/雰囲気 ★★★★☆
席が空いているか覗いたら、店内から「空いてますよ」と声をかけてくれました。
終始、気遣いを感じる接客で、気持ちよく食事を楽しめました。

また、海外からの観光客の姿も1組いて、20代くらいの若いアジア系カップルだったのですが、メニューをスマホで撮影して翻訳しながら注文していました。
スタッフも慣れているようで戸惑うこともなく注文を聞いて、最後に「キャッシュ・オンリー」を強調。この光景は老舗の飲食店ではよく見るのですが、そろそろ会計をデジタル化しないと若者が来なくなりそう、と心配になります。

 

ADDRESS
東京都文京区湯島3-40-3
3-40-3 Yushima, Bunkyo Ward, Tokyo

TEL (11:30-20:10)
03-3834-2901
+81-3-3834-2901

REGULAR HOLIDAY
水曜日
WEDNESDAY

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発信者:高橋賢司
Webディレクター/吉祥寺 Kichijoji GO!運営
吉祥寺在住。吉祥寺の飲食店情報を中心に発信。ときどき西荻、三鷹、中央線、全国の美味い店

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